研究の成果として、教員の近著を紹介します。

2023

Languages and Nationalism Instead of Empires

Motoki Nomachi, Tomasz Kamusella編著(清沢紫織分担執筆)

本書は、中欧地域の様々な国民国家において、言語がいかにして人間集団によって創造され、正当化され、維持され、あるいは破壊されるのか、そのメカニズムについて、14本の論文を通して社会言語学的な観点から考察する論文集である。清沢が執筆した “Rethinking the Graphization of the Belarusian Language in Eastern and Western Belarus During the Interwar Period”(戦間期の東西ベラルーシにおける文字表記化を再考する)では、現代ベラルーシ語の書記体系の成立過程に注目し、現在のベラルーシ地域がソ連とポーランドによって東西に分断されていた戦間期に展開されたラテン文字使用とキリル文字使用の選択に関する多様なメタ言語言説を考察した。歴史的にラテン文字表記とキリル文字表記が併用されてきたベラルーシ語の書記体系の特徴について、それを支えてきた言語イデオロギーの変遷を通して再考することを試みた論考である。

出版社:Routledge

ISBN:9780367471910

発行年月:2023年9月

伝統と現代モンゴル文学との関係性ー2023年inウランバートル (МОНГОЛЫН УРАН ЗОХИОЛЫН ХАРИЛЦАА ХОЛБОО, УЛАМЖЛАЛ, ӨНӨӨ УЛААНБААТАРЫН ХУРАЛ- 2023)

テレングト・アイトル 分担執筆

モンゴル国詩人作家協会・日本モンゴル文学会(50周年記念会)・モンゴル国文化省共催によるフォーラム(モンゴル・ロシア・日本・中国・フランス・チェコ6カ国の研究者参加)の論文集。「文学理論・文学史・文学の内外関係・翻訳と影響」というカテゴリーにおいて、当方の分担執筆(英語)・基調講演となる「詩的狂気とイマジネーション・アレゴリー:コールリッジ詩<クビライ汗>における寓意的解釈」(Concerning Poetic Creativity Between Imagination and Allegory: Attempt at an Allegorical Interpretation of Coleridge's “Kubla Khan”)は、西洋古典における詩的狂気とイマジネーションを背景にコールリッジはどのようにクビライ汗の夢の再表象をしたのかを通じ、モンゴル文学の理論的研究の展望を論じる。

出版社:“Жиком пресс” ХХК-д хэвлэв. (モンコル国ジェイコム出版社)

ISBN:978-9919-0-1722-4

発行年月:2023年12月

人工知能とどうつきあうか―哲学から考える

鈴木貴之編著/柴田崇ほか分担執筆

深層学習を用いた人工知能の急速な進展によって、2010年頃に第3次人工知能ブームが到来した。しかし、生物のように多様な課題を行うことができる汎用知能を作るという究極目標を実現する見通しはまだ得られていない。本書では哲学の知見を踏まえ、人工知能を人間の能力を拡張する道具と捉えて建設的な関係性を構築する道を探る。

出版社:勁草書房

ISBN:978-4326103249

発行年月:2023年7月

超越への親密性ーもう一つの日本文学の読み方(Intimacy with Transcendence: A New Perspective on Japanese Literature)

テレングト・アイトル著

「文学とは何か?」。著者の発した根源的な問いかけは、プラトン、ソクラテスを皮切りに夏目漱石、森鴎外、三島由紀夫に至るまで古今東西の「水脈」を縦横に辿り、文学における最大の秘密へと迫っていく。著者はこう綴る
〈文豪(*漱石、鴎外、三島)はいずれも作品、テクストを通じてわれわれの目に映る現実の皮相な世界を指し示しながら別の世界を表象し、いずれも意識の誕生や言葉の形成の瞬間を見つめながらそこから広がる認識の世界を提示し、しかもその世界をどのように表現し対処すべきかを示唆してくれているのである。確かに、それらの作品・テクストは、つねにわれわれ読者の読みに向かって開かれているが、この論集はそれに勇気づけられ、一貫してマテリアリズムへのアンチ・テーゼを提示したつもりでいる〉
文学が生まれてくる「創作源泉」は、インスピレーションか、それともリアリティかー-マテリアリズム(物質主義)に支配された昨今の文学研究に一石を投じるダイナミックな比較文学論!(出版内容紹介より)

出版社:北海学園大学出版会

ISBN:978-4-910236-08-7

発行年月:2023年3月

あたたかき日光(ひかげ) 三浦綾子・光世物語

田中綾 著

「綾子が口述するのを筆記する間、私は涙を流していた」

夫・光世が14歳から晩年までに遺した63冊の日記をもとに、夫婦の愛と創造の裏側を描く。三浦綾子生誕100年にちなみ2022年3月から1年間、「北海道新聞」で連載した小説の単行本化。三浦綾子記念文学館・北海道新聞創刊80周年共同プロジェクト。 (出版社内容紹介より)

出版社:北海道新聞社

ISBN:978-4-86721-090-1

発行年月:2023年3月

2022

M.M.ドブロトヴォールスキィのアイヌ語・ロシア語辞典

寺田吉孝・安田節彦 訳

19世紀中頃迄に世に出た主なアイヌ語語彙集にある語を網羅し、更に著者自らがサハリンで採録した語彙を加えた発行当時最大のアイヌ語辞典の翻訳。M.M.ドブロトヴォールスキィが医者として隣人としてアイヌの人々と接する中で耳にした生き生きとした表現が満載。アイヌの言語・文化の研究論文も多数収録。(出版社内容紹介より)

出版社:共同文化社

ISBN:978-4-87739-374-8

発行年月:2022年11月

ローカルな材源と公共的知識

テレングト・アイトルほか編訳

本書は、一次資料、既存の実践と経験に基づき、モンゴル詩学の成立とジャンル学科の設立、詩学にまつわる系譜とモデル及びその概念、様式、作家のアイデンティティなどの問題について検討し、世界文学のパースペクティブにおいてモンゴル詩学とジャンル分野のシステム化を明らかにし、改めて詩学とジャンル体系について論じたものである(出版社HP内容紹介より)。

出版社:mazon Kindle eBook

ISBN:B0BGBXMXM5

発行年月:2022年9月

アイヌ文化史辞典

関根達人/菊池勇夫/手塚 薫/北原モコットゥナㇱ 編

高まるアイヌ文化へのまなざしを受け、歴史をはじめ、考古資料や民具に基づく物質文化や言語・口承文芸・儀礼の精神文化など、約1000項目を図版も交えてわかりやすく解説する初めての総合辞典。ひと・もの・こころの三部構成から成り、北方世界で独自の文化を営み、長年暮らしてきたアイヌ民族の歴史・文化・社会がわかる。地図・年表・索引など付録も充実。(出版社内容紹介より)

出版社:吉川弘文館

ISBN:9784642014809

発行年月:2022年7月

サイボーグ―人工物を理解するための鍵―

柴田崇 著

人工物の意味とは何か? この問いに、サイボーグを導き手とし、それについて紡がれた言説を批判的に辿ることで漸近する。意味を先取りした能力/機能の「拡張」から、使用の経験を記述可能な「延長」への生態学的な転回が人工物理解の新たな視座を提供する。(出版社内容紹介より)

出版社:東京大学出版会

ISBN:978-4-13-015184-9

発行年月:2022年4月

詩的狂気の想像力と海の系譜―西洋から東洋へ、その伝播、受容と変容 (The Imagination of Poetic Madness and a Genealogy of the Sea: The Transmission, the Reception, and the Transformation from the West to The East)

テレングト・アイトル著

古来、こころの治癒や高揚ないし生きる糧を与えてくれる最高の宝典は文学である。その宝典のなかでも作家や芸術家が驚異と感じながら憧れてやまない醍醐味とは何か。本書はその頂点にあたる古代ギリシアを起源とする「詩的狂気」や「詩的想像力」というプラトンの言説について概念的なアプローチをし、アリストテレス的な展開の「ミメーシス」(現実模倣)・リアリズムとの対峙のなかで、発生し、展開し、定義され、伝播されてきたことを主要な理論的枠組みとし、とりわけ、それが文学作品においてどのように「海」というきわめて特殊なモチーフと絡み合いながら結びついて表象されてきたかを解明する。かつそれらが如何に西洋から東洋(日本・中国・モンゴル)に伝播され、受容され、また抵抗・変容などを辿ってきたのかを考察する。この系譜的な考察を通して文学創作において今までしばしば回避され、とくに東洋においてほとんど疎遠されてきたにもかかわらず、文学作品の背後と根底には、確固として延々と継承してきた詩的狂気の想像力の系譜に改めて光をあてたものである。
 この系譜学的な考察において、「海」は詩的狂気と詩的想像力の試金石となっており、作家や作品の海の表象のありようによって、その詩的狂気の想像力の表象・顕現が測られ、あるいはそれが認知のスペクトルとして捕捉されるような役割を果たしている。考察全体の大凡の時代や範囲と地域は、前半、古代ギリシアから端を発し、イタリア・ルネサンスを経由してイギリス・ドイツ・フランスのプレ・ロマン主義とロマン主義時代の文学において勃興されたことを明らかにし、後半は、どのように明治日本から近代中国ないしモンゴルの詩人や作家たちに影響を与えてきたのかを考察する(出版社HP内容紹介より)。

出版社:Amazon Kindle eBook

ISBN:B09V51NK4F

発行年月:2022年3月

「いろは」の十九世紀―文字と教育の文化史―

岡田一祐 著

寺子屋が全国で広まった時代から近代小学教育が確立するまで、「いろは」が中心だった百年の文字教育の文化史を多様な視覚から描く。(出版社内容紹介より)

出版社:平凡社

ISBN:9784582364668

発行年月:2022年3月

バナナの足、世界を駆ける―農と食の人類学―

小松かおり 著

融通無礙なる存在・バナナ。世界の人びとの付き合い方はこんなに違っているのに、でもこれほど愛される食べ物が他にあるだろうか? コンゴ・カメルーン・ガーナ・ウガンダ・インドネシア・パプアニューギニアそして沖縄。世界中のバナナを通して農と食をみつめてきた研究者がたどり着いた、ヒトとバナナの「遊び」の関係。(出版社内容紹介より)

出版社:京都大学学術出版会

ISBN:9784814003686

発行年月:2022年1月

2021

Complexity, Emergence, and Causality in Applied Linguistics

Jérémie Bouchard 著

This book suggests that applied linguistics research is inherently concerned with complexity, emergence and causality, and because of this it also requires a robust social ontology. The book identifies and unpacks a range of conceptual issues in applied linguistics from a social realist perspective, and provides a critique of successionism and interpretivism as two dominant and enduring empiricist tendencies in the field. From this critique, it considers the emergence of complex dynamic system theory as viable yet not entirely unproblematic conceptual sophistication of current applied linguistics research. Although the growing popularity of complex dynamic system theory is undeniable and understandable, this book argues that its integration within a social realist ontology is necessary for further developments in the field. The book will be of interest to applied linguists and social scientists interested in language-related issues including language learning and teaching, language change, language policy and planning, bilingualism/multilingualism, and language and identity.(出版社内容紹介より)

出版社:Palgrave Macmillan

ISBN:978-3-030-88031-6(ハードカバー) 978-3-030-88032-3(eBook)

発行年月:2021年11月

書棚から歌を―2015-2020―

田中綾 著

北海学園大学教授で三浦綾子記念文学館の館長を務める著者による北海道新聞の人気コラムが待望の書籍化!
自身も歌人である著者が短歌が引用された本を見開き2ページで1冊ずつ紹介します。短歌界の巨人たちはもとより、歌舞伎町のホストにキョンキョンまで多彩な顔ぶれが登場し、豊饒なる読書の愉しみを満喫できます。読むだけで生きる勇気が湧いてくるような歌と読者の知的好奇心を刺激する筆致の見事なコンビネーションで、ページをめくるたびに読みたい本が増えていく〝珠玉〟のブックガイド!(出版社内容紹介より)

出版社:北海学園大学出版会

ISBN:978-4-910236-03-2

発行年月:2021年11月5日

ニューギニアの森から―平等社会の生存戦略―

須田一弘 著

食い物の恨みはおそろしい――パプアニューギニアの熱帯雨林、半遊動的生活を送るクボの人びとは「妬み」がもたらす呪いを怖れて平等を志向する。
食べ物も土地も婚姻も、一つの死ですらもう一つの死で埋め合わせる。
生態人類学が見つけ出した「妬み」と平準化というテーマを押し広げ、「生業が社会を規定する」という通説を覆す。(出版社内容紹介より)

出版社:京都大学学術出版会

ISBN:9784814003457

発行年月:2021年6月

野性性と人類の論理―ポスト・ドメスティケーションを捉える4つの思考―

卯田宗平 編/須田一弘ほか分担執筆

人類にとって動植物の野生性とは何か――。養蜂や鷹狩り、鵜飼い、イヌ、タケ、水田植物など、なじみ深くもユニークな例を引きながら、ドメスティケーション(人類による動植物の家畜化や栽培化)を四つに類型化し、自然と人間とのかかわりに新たな解釈枠組みをもたらす。(出版社内容紹介より)

出版社:東京大学出版会

ISBN:978-4-13-056312-3

発行年月:2021年4月

近代平仮名体系の成立―明治期読本と平仮名字体意識―

岡田一祐 著

「一九〇〇年、小学校令施行規則により平仮名の字体が統一された」。本書は、この一行に対する幾多の註釈である――。
明治時代に現代の平仮名体系が確立した過程は現在まで描かれてこなかった。その欠を補うため、明治時代の小学読本の全体の調査に基づき、平仮名の字体に対する意識の変化を探り、近代平仮名体系の成立を描き出した初の書。
成立より明治まで、書き手に任されてきた平仮名字体は、明治期に人為的な統制を加えられ、現代用いられている仮名字体が成立した。それを成り立たせた、明治期の平仮名の「字体意識」とはいったい何か。その意識の形成を読み解く。
近代平仮名体系の成立を描き、「字体意識」という新たな観点から平仮名史の再構築を行う。(出版社内容紹介より)

出版社:文学通信

ISBN:978-4-909658-48-7

発行年月:2021年2月

宗教と風紀〈聖なる規範〉から読み解く現代

高尾 賢一郎/後藤 絵美/小柳 敦史 編著

法や規則として、あるいは暗黙の了解として、社会のなかで守ることを期待されるルール=〈風紀〉。宗教とのかかわりを軸に、その複雑でダイナミックな動態を読み解く。エジプト、イラン、ウズベキスタン、中国、フランス、ドイツ、サウジアラビア、アメリカ、日本、そしてイスラーム国まで、新たな領域を拓く共同研究(出版社内容紹介より)

出版社:岩波書店

ISBN:9784000614474

発行年月:2021年1月

2020

世界遺産とは何か?―さまざまな「物語」を読み解く―

北海学園大学人文学部世界遺産研究班 編著

人文学部教員の共同研究の成果
『世界遺産とは何か?―さまざまな「物語」を読み解く』(マイナビ出版)が刊行されました!

世界遺産の「普遍的な価値」を認めつつそれを問い直し、世界遺産を手がかりに歴史や文化の重層性を再確認する学際的な「論文集」です。それと同時に、人文学に少しでも関心を持ってくださる人たち(特に高校生)への「メッセージ」にもなっています。人間の営みとその意味を考える「学問」の世界への扉を、ぜひ叩いてみてください。

【目次】
はじめに —世界遺産の「普遍性」と「多様性」ー/大森一輝(北海学園大学人文学部英米文化学科)
第1章 世界遺産はどのように選ばれるのか/宮澤光(NPO法人 世界遺産アカデミー)
第2章 縄文遺跡群を世界遺産に —登録の光と影—/手塚薫(北海学園大学人文学部日本文化学科)
第3章 世界遺産登録に伴うストーリーの創出とその問題点 —「長崎・天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の事例から—/鈴木英之(北海学園大学人文学部日本文化学科)
第4章 世界遺産のメタヒストリー —「アイスレーベンとヴィッテンベルクのルターの記念建造物群」を例に—/小柳敦史(北海学園大学人文学部英米文化学科)
第5章 「プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館とその関連施設」から見える世界/柴田崇(北海学園大学人文学部英米文化学科)
第6章 多文化主義社会における「顕著な普遍的価値」 —カナダの世界文化遺産が抱える困難—/仲丸英起(北海学園大学人文学部英米文化学科)
第7章 先住民遺跡観光の現状と課題 —カナダ・アルバータ州を例に—/大森一輝
第8章 無形文化遺産 —文化を理解し保護する新たな取り組み—/ブシャー ジェレミ(北海学園大学人文学部英米文化学科)
第9章 日本の世界遺産を伝える英語語彙・定型表現 —英語の学びの視点から—/田中洋也(北海学園大学人文学部英米文化学科)
おわりに/宮澤光

出版社:マイナビ出版

ISBN:978-4-8399-7448-0

発行年月:2020年9月14日

真理の多形性─ F・W・グラーフ博士の来日記念講演集─

F・W・グラーフ著、安酸敏眞監訳、小柳敦史・森川慎也他訳

グローバリゼーションの波が世界の隅々までを覆いつくした今、かつて人々の生活と文化の中心を占めていた宗教や神学は、瀕死の状態にあるのだろうか? ドイツでノーベル賞に次ぐ学術的権威とされる「ライプニッツ賞」を神学者として初めて受賞したフリードリヒ・ヴィルヘルム・グラーフ博士の見解はそうではない。2019 年秋、日本を訪れて東大、京大、北海学園大学など各地で講演を行ったグラーフ博士は、日本の研究者と学生たちを前にこう語った。
「ほぼすべてのヨーロッパ社会において、長年にわたり社会構造のあるべき状態をめぐって根本的な対立が繰り広げられてきました。そして私たちはこのように問いかけてきました。――異なる信念と信仰を持つ人たちが平和に共生できるためには何が必要なのか?」
イスラム過激派によるテロ、難民問題、ブレグジット......現在、世界各国で吹き荒れる “ 排外的ポピュリズム ”の根ざすところを理解し、問題を解決するヒントを神学は与えてくれる。そのキーワードが「真理の多形性」なのである――。神学・宗教学のみならず、哲学、倫理学、歴史学、社会学、政治学に至るまで該博な知識を駆使し、「役に立つ神学(Theologie,die gebraucht wird)」をモットーとするドイツの〝神学の巨人〟は今、何を考えているのか。現実世界と切り結ぶその最新の研究成果を語りつくした貴重な講演録を代表論文のハイライトとともに完全収録。北海学園大学出版会創刊の書。(北海学園大学出版会による内容紹介より)

出版社:北海学園大学出版会

発行年月:2020年3月31日

非国民文学論

田中綾 著

「非国民文学」とは何か。近代日本が成立して登場した「国民」という概念を前提に、「国民ではない」と見なされた文学者を取り上げて、作品と生きざまを検証する。
「非国民」の概念を身体性と精神性の双方から考察するため、「国立療養所」としてのハンセン病療養所に着目して、「国立」と「非国民」とを検討する。
戦時下では身体的に「非国民」とされた療養者が、精神的には総力戦を見守る「国民」の立場にもあったという逆説的な短歌を紹介する。
リアリティーあふれる闘病歌が高く評価されたが、その歌人の内面はアンチリアリズム志向だったという逆説的な作品を、2・26事件歌もあわせて例証する。
さらに、金子光晴の家族詩集と丸谷才一の小説も素材にし、戦時下に「徴兵忌避」を選んで身体的自由を得ようとした男性が、戦中も戦後も定住できずに、むしろ身体的不自由を負うことになったという逆説的な展開を解明する。
総動員体制から排除されて「非国民」とレッテルを貼られた文学者の精神の自由に光を当てる。
(出版社内容紹介より)

出版社:青弓社

ISBN:978-4-7872-9252-0 C0095

発行年月:2020年2月21日

2019

How Much Do You Agree? Evolving Opinions

小林敏彦/Jeremie Bouchard 著

【英語でディスカッションする技能を高める】

・英語でディスカッションする技能を高めることを主眼とした,4技能統合型の総合教材です。
・6段階のスケールで同意の度合いを数値で確認し,それが他者の意見に触れて変化し,発展するプロセスを分析します。
・自分の意見を,数量化して自分の立ち位置を見極め,表現する力を身に付けることを目指します。
・音声にQRコードをつけ,学習者の端末で音声を再生できます。語注のPDFファイル用のQRコードも準備しました。
(出版社内容紹介より)

出版社:三修社

ISBN:978-4-384-33486-9 C1082

発行年月:2019年2月20日

2018

Agency in Language Policy and Planning: Critical Inquiries

Jeremie Bouchard, Gregory Paul Glasgow編著

This collection brings together theory and ethnographic research from a range of national contexts to offer unique insights into the nature of agency in language policy and planning. Situated within a broader sociological framework, the book explores agentive processes at work in case studies from around the world, engaging in discussions of such key themes as language and identity, language ideologies, linguistic diversity in education, and language revitalization. Each chapter examines the ways in which decisions made at both the local and national level impact language use and in turn, the dynamic relationship between language use, policy, and practice in these contexts. Taken together, this volume advances our understanding of agency in language policy and planning and directions for future research, making this key reading for students and scholars in language and education, critical sociolinguistics, and applied linguistics.

出版社:Routledge

ISBN:9780429455834

発行年月:2018年12月11日

Researching Agency in Language Policy and Planning

Gregory Paul Glasgow, Jeremie Bouchard編著

This concise collection features seven studies on agency in language policy and planning across five different national contexts. Building on themes explored in Agency in Language Policy and Planning, this volume highlights the complex relationship between agency and broader ideological discourses, integrating social theory toward contributing to and enhancing growing scholarship on language policy and planning. This book will be of particular interest to students and scholars in language policy and planning, language and education, critical sociolinguistics, and applied linguistics.(出版社内容紹介より)

出版社:Routledge

ISBN:9781138316164

発行年月:2018年12月11日

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』を読む

田尻芳樹・三村尚央編(森川慎也分担執筆)

【創造力と技巧、その核心へ】
クローンをめぐる倫理の問題から、「信用できない語り」などの小説技法、介護問題や「女同士の絆」といった現代的なテーマ、さらには映画やテレビドラマなど翻案作品にまで射程を広げ、作者の最高傑作『わたしを離さないで』だけを徹底的に読み込む最新/最深の成果。 国内の研究者の論考はもちろん、本邦未訳であった海外の代表的なイシグロ論を大々的に紹介。未刊行の草稿ノート類への調査も踏まえ、カズオ・イシグロの稀有なる創造力の核心へ一挙に斬り込む! (出版社内容紹介より)

出版社:水声社

ISBN:978-4-8010-0355-2

発行年月:2018年9月

カズオ・イシグロの視線-記憶・想像・郷愁

荘中孝之・三村尚央・森川慎也編

幼年時代の日本での記憶とイギリスでの体験をもとに、独特の世界を構築するイシグロ。気鋭の英文学者らがノーベル賞作家の全作品を時系列に通観し、その全貌に迫る。

本書のタイトルは『カズオ・イシグロの視線―記憶・想像・郷愁』である。デビュー作の書名『遠い山なみの光』(原題A Pale View of Hills)にもその語が見られるように、 イシグロは遠くを見晴るかす眺め(view)に強く惹かれている。そしてそこに向けられる視線が、物理的に離れた場所だけでなく、時間的な隔たりの彼方にある過去をもとらえようとするものであることは、 彼の作品群の随所から理解されるであろう。その原点にあるのが、五歳の時に離れながらもつねに彼とともにあり続けた日本であることは明らかだが、自分自身でしばしば強調するように、 懐かしく回想される日本は記憶と想像の入り交じった、独特の世界なのである。本書の各執筆者はそのようなイシグロのテクストに寄り添いながら、彼の視線とその先にあるものをとらえなおそうとしている。―本書「まえがき」より (出版社内容紹介より)

出版社:作品社

ISBN:978-4-86182-710-5

発行年月:2018年7月

中世古今和歌集注釈の世界―毘沙門堂本古今集注をひもとく

人間文化研究機構 国文学研究資料館 編/鈴木英之ほか分担執筆

勅撰和歌集の第一として日本文化史上に大きな位置をなした『古今和歌集』。成立から現代にいたるまで、さまざまな形で受容・咀嚼されてきた同集にまつわる解釈史は、中世日本において特筆すべき展開を見せた―。鎌倉時代に始まると考えられる、秘注的な内容を持った注釈の流行である。いわば荒唐無稽とも言うべき内容を持ったこれらの秘注的注釈は、鎌倉時代から室町時代前半にかけてかなりの権威を持って幅広く流布し、謡曲、連歌、物語など、その時代の文学や文化に大きな影響を与え続けた。中世古今和歌集注釈書における重要伝本である『毘沙門堂本古今集注』、そして、中世古今集註釈をめぐる諸問題について、和歌研究をはじめ、文献学・物語・説話・国語学・思想史等の視角から読み解き、中世の思想的・文化的体系の根幹を立体的に描き出す。(出版社内容紹介より)

出版社:勉誠出版

ISBN:978-4585291589

発行年月:2018年3月

後嵯峨院時代の物語の研究―『石清水物語』『苔の衣』

関本真乃 著

鎌倉中期、いわゆる後嵯峨院時代の京都の貴族文化を基盤として成立したとされる『石清水物語』『苔の衣』について、史実上の人物モデルや系譜との一致、先行作品への依拠を明らかにし、物語の制作意図から作者周辺の推定、作品評価まで実証的に迫り、従来の研究を越えた新しい卓見をもたらす。 (出版社内容紹介より)

出版社:和泉書院

ISBN:9784757608702

発行年月:2018年3月30日

アイヌ文化と森―人々と森の関わり

手塚薫・出利葉浩司 編著

アイヌ民族の自然の恵みを利用しようとする生産活動は、宗教的かつ道徳的な行為と一体のものである。自然を強引に制御しようとするのではなく、自然への感謝や畏怖の念を併せ持っている。しかしそうした価値観はアイヌに特有なものではない。収録された12篇の論考は、アイヌ文化を多角的に捉え直すきっかけとなろう。

出版社:風土デザイン研究所

ISBN:9784990502492

発行年月:2018年3月20日

はじめての人文学―文化を学ぶ、世界と繋がる

佐藤貴史・仲松優子・村中亮夫 編著、田中綾・手塚薫・柴田崇 著

多くの学生たちが歴史、文学や、思想、社会学などを学んでいるが、これら人文学を学ぶ意義とは何か?著者たちは講義の経験や現実問題を意識しながら、日本近現代文学、思想史、フランス近世・近代史、人類学、メディア論、地理学を通して、学生アルバイトとワークルール、アイヒマン裁判の意味、そしてフランス革命と主権、アイヌ社会と暴力、さらにAI社会の未来や、過去の津波被害と地名の関連など具体的な研究を紹介し、人文学の多彩な事例を踏まえて、文化を学び、世界と繋がる道を示す。(出版社内容紹介より)

出版社:知泉書館

ISBN:9784862852694

発行年月:2018年3月4日

2017

アンシアン・レジーム期フランスの権力秩序 蜂起をめぐる地域社会と王権

仲松優子 著

アンシアン・レジーム期のフランスは、典型的な絶対王政国家と長らくとらえられてきた。しかし、それは妥当なのだろうか。本書は、南仏ラングドック地方において、王権と地域権力が地域秩序の形成をめぐって交渉し、頻発する蜂起にどう対応したのかという点に焦点をあてる。ここからは、王権が志向する支配秩序とは異なるさまざまな秩序が併存し競合していた社会の実態が浮かび上がってくる。絶対王政論・社団的編成論を批判的に検討し、ヨーロッパ近世史研究との架橋を試みながら、新たなアンシアン・レジーム像を描き出す本書は、フランス革命の意味をも問う。(「BOOK」データベースより)

出版社:有志舎

ISBN:978-4908672170

発行年月:2017年12月26日

ただの黒人であることの重み: ニール・ホール詩集

Neal Hall 著/大森一輝 訳

黒人差別の苦痛をえぐる、詩人の叫び。 移民排斥、ヘイトスピーチで揺れる現代に、 様々な人種と共に生きていく覚悟を問う詩集。イタリア、ドイツ、インドでも紹介・出版され、世界中で評価されている注目の現役黒人詩人、初の邦訳出版!(出版社内容紹介より)

出版社:彩流社

ISBN:978-4779123849

発行年月:2017年9月19日

Ideology, Agency, and Intercultural Communicative Competence: A Stratified Look into EFL Education in Japan (Intercultural Communication and Language Education)

Jeremie Bouchard 著

Associated with an important epistemological shift from language proficiency to language criticality in applied linguistic research, this book employs ethnographic methods to investigate the relationship between foreign language education geared towards the development of learners’ intercultural communicative competence; nihonjinron and native-speakerism as potentially constraining ideological forces; and EFL practices observed at four Japanese junior high schools. This multi-faceted book outlines several challenges shaping ideology research in educational settings, and responds by developing a realist-oriented theoretical and methodological approach to address these challenges. This book serves as a unique point of reference for the study of parallel nationalist discourses embedded in foreign language education systems around the world.(出版社内容紹介より)

出版社:Singapore: Springer

ISBN:978-9811039256

発行年月:2017年

発行日(E-book):2017年3月31日
発行日(Hardcover):2017年4月28日

狩猟採集民からみた地球環境史: 自然・隣人・文明との共生

池谷和信 編/手塚薫ほか分担執筆

数百万年という人類史のほとんどで、私たちは狩猟採集民だった。農耕民、国家や宗教、市場経済といった外部の変化のなかで、狩猟採集民はいかに生きてきたのか。考古学・人類学の知見を結集して、文明の起源と変容に迫り、壮大な地球環境史を描く。(出版社内容紹介より)

出版社:東京大学出版会

ISBN:978-4130603171

発行年月:2017年3月20日

海賊史観からみた世界史の再構築―交易と情報流通の現在を問い直す―

稲賀繁美 編/テレングト アイトルほか分担執筆

本書は、文化交渉・交易全般における「海賊行為」を綜合的に再検討することを目的とし、国際日本文化研究センターで行われた共同研究の報告書である。ここで言う「海賊行為」とは、交易路に対する私掠、著作権・複製権への侵害、公的秩序へのサボタージュ、さらには近年のサイヴァー攻撃などを含む。狭義の美術史、文化史、交易史のみならず、経済史、国際法、情報流通論などの分野の知見をも学際的に取り入れ、国際的視野から葛藤の現場を解明する。(「BOOK」データベースより)

出版社:思文閣出版

ISBN:978-4784218813

発行年月:2017年3月3日

「ヘイト」の時代のアメリカ史:人種・民族・国籍を考える

兼子歩・貴堂嘉之 編/大森一輝ほか分担執筆

日本国内のヘイトへの違和感、憤りから本書は出来上がった!そして、人種差別主義者にして性差別主義者、移民排斥論者の「トランプ大統領」が選出された「ヘイトの時代」にこそ、本書は刊行される意義がある!アメリカを「人種・民族・国籍・ジェンダー」の観点から論じた刺激的なテキストから浮かび上がる「日本を問い直すためのアメリカ史」! (「BOOK」データベースより)

出版社:彩流社

ISBN:978-4779122927

発行年月:2017年2月10日

2016

詩的狂気の想像力と海の系譜―西洋から東洋へ、その伝播、受容と変容

テレングト アイトル 著

本書は、海の文学の発端やきっかけとなる作品がどのように詩的狂気の想像力と絡み合いながら表象されてきたかを明らかにしたもので、それらがどのように西洋から東洋へと伝播し、受容され、また変容してきたかを考察する。文学創作と作品自体の背後にある詩的狂気の想像力と海の系譜に光をあてる。

出版社:現代図書

ISBN:978-4434218415

発行年月:2016年9月16日

麻雀の誕生

大谷通順 著

「ポン!」「チー!」という中国風のかけ声、牌の表面に彫り込まれた漢字と神秘的な文様…あたかもはるか昔から存在していたゲームのように錯覚していませんか? ところが、その歴史は意外に浅く、わずか90年前にはその呼び名さえ定まっていなかったのです…。中国・アメリカ・日本に眠る貴重な資料を掘り起こし、「麻雀」誕生の真実にせまる、初めての試み! (「BOOK」データベースより)

出版社:大修館書店

ISBN:978-4469213560

発行年月:2016年8月25日

Teacher Agency and Policy Response in English Language Teaching (Routledge Research in Language Education)

P.C.L. Ng and E.F. Boucher-Yip 編/Bouchard, J.ほか分担執筆

This book is a response to growing need for empirically-grounded studies of micro-level processes within language policy and planning research. Focusing specifically on acquisition planning and language-in-education policy, the thirteen chapters in this volume explore individual teacher agency as a multifaceted process combining teachers' individual histories, professional training, personal values and instructional beliefs, and how these factors lead to situated interpretations of and responses to language-in-education policy. Together, they reveal not only how educational reforms and policy changes are negotiated on the ground but also how localized responses relate to policy processes at national levels.

出版社:London: Routledge

ISBN:978-1138181892

発行年月:2016年

発行日(E-book):2016年8月5日
発行日(Hardcover):2016年8月19日

学芸と文芸 (生活と文化の歴史学)

福島金治 編/鈴木英之ほか分担執筆

日本中世における学問に関わる技能・技術とその伝授のあり方について、Ⅰ国家と家学、Ⅱ和漢書の伝来と集積、Ⅲ寺院と僧の学びの形、Ⅳ伝授と新たな法の創生、Ⅴ知識伝授の場と学習方法、という5つのテーマのもとにまとめた論文集。

出版社:竹林舎

ISBN:978-4902084290

発行年月:2016年8月16日

欧米留学の原風景: 福沢諭吉から鶴見俊輔へ

安酸敏眞 著

1860年の咸臨丸による福沢諭吉のアメリカ渡航から、1942年の「日米交換船」による武田清子、鶴見俊輔の帰国に至る82年間28名の欧米留学を集合体験として見るときそこに現れてくる風景はどのようなものか。近代日本の学問形成や発展に果たした海外留学の役割と歴史的意義を解明する。

出版社:知泉書館

ISBN:978-4862852335

発行年月:2016年5月25日

食と農のアフリカ史: 現代の基層に迫る

石川博樹・小松かおり・藤本武 編

アフリカの農は遅れているだろうか?アフリカの食は貧しいだろうか?アフリカには地域ごとに独自の農と食の歴史があり、豊かな食文化がある。植民地期まで無文字社会が多かったアフリカの食と農を、フィールドワークと文献から探る。アフリカ各地で研究してきた研究者が、自分がおもしろいと思うトピックでさまざまな視点から書き下ろした論考集。大学生や大学院生をアフリカの食と農研究に誘うために書かれた本。

出版社:昭和堂

ISBN:978-4812215241

発行年月:2016年3月31日

Crossing Borders―ジャズ/ノワール/アメリカ文化

本城誠二 著

アメリカ文学者による斬新なスピリチュアル・ジャズ論、フィルム・ノワール論。アメリカの都市と郊外を描く映画と小説を語る言葉が、あらゆる境界を超えて軽快に行き交う―

出版社:英宝社

ISBN:978-4269740334

発行年月:2016年3月4日